【今月の特集】終わりから始まる異色のRPG「勇者死す。」特集

2009年6月4日更新

「勇者死す。」開発スタッフインタビュー

桝田省治【原案・シナリオ・ゲームデザイン】

「天外魔境U卍丸」「リンダキューブ」「俺の屍を越えてゆけ」等、ファンの間では“桝田ゲー”というジャンルで呼ばれるほど、他に類を見ないRPGばかりを作る鬼才ゲームデザイナー。
有限会社MARS(マーズ)代表取締役。

河上京子【「勇者死す。」プロデューサー】

Gモード所属のプロデューサー。個性派のヒットメーカーと言われる。「ゆるゆる」シリーズ、「マジカルファンタジスタ」シリーズなど100タイトルを超えるゲームをプロデュース。SFC時代からゲーム開発に携わり、現在に至る。アパレル業界出身。


「勇者死す。」開発のきっかけとお互いの印象は?

――まずは「勇者死す。」の開発の経緯を教えてください。

桝田:

僕がゲーム開発会社のピラミッドに出入りしていた時に「こういう企画があるよ」って話してたもののひとつが「勇者死す。」だったんだけど、ある日、飯さん(※)から「ウチでやらない?Gモードの河上さんていうのがいて、そこに持っていけばなんとかなるよ」と言われたのがきっかけだね(笑)。

※「勇者死す。」の開発を担当した株式会社ピラミッド所属のプロデューサー・飯淳氏。


河上:

私はそれまで桝田さんとは面識がなくて、突然飯さんから「やんない?」っていう電話がかかってきて「ちゃんと説明してよ」って(笑)。


――キャラクターデザインや音楽などの顔ぶれもすごく豪華ですが、他の方々もそういう雰囲気で声をかけられたんですか?

河上:
そうですね。とにかく桝田さんの作った世界をきちんと表現できて、ゲームデザインに負けない人にお願いしたいと思って、飯さんにこちらから希望を出したりして実現しました。

――今回初めて一緒に仕事をされたということですが、お互いの最初の印象はどうだったんですか?

河上:
……普通だよね?

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桝田:
うん。
あ、でも僕は女性のプロデューサーって初めてだったので、最初はちょっと戸惑った。男性のプロデューサーで意見の食い違いがあると「こうだからこうで違う」って違うところを指摘して説明して納得するんだけど、この人「なんとなく」って平気で言うから(苦笑)。答えがないものに対してはどこまでいっても答えがないから、「なんとなく」に反論しようがないんだよね。
あと僕は自分の趣味・嗜好に関してまったく自信がないというか、「すごく偏っているな」という自覚があるので、センス的な判断は河上さんにお任せしてました。

――「死」や「残りの人生」といった重いテーマを扱ったゲームですが、「勇者死す。」の企画を出した時の周囲の反応などはどうでしたか?

ゲーム画面

死期が迫るにつれ、どんどん弱っていく勇者。切ない上に焦ります!

桝田:
大きく分けると2種類で、ひとつは「個人的にはプレイしてみたいけど『自分の葬式を見てみたい』というニーズがユーザーにあるのか、採算が取れる商品として成立するのか判断できない」という意見。
もうひとつは、「刻々とさまざまな要素が減っていくという、ほとんどのゲームと逆のシステムがゲームとして成立するのか、具体的なイメージが湧かない」っていう意見だった。まあ、これらの反応は、僕にとってはいつものことで特に珍しくはないけどね。

――最初の企画と実際に完成したアプリを見比べて、制作の過程で大きく変更したところはありますか?

桝田:
僕ね、最終的な形というのは細かいところをあんまり気にしないんだよね。
勇者死す。」では、自分の葬式を見てがっかりしたり良かったと感じたり、その微妙なもどかしさが表現できてさえいれば、見た目が記号みたいなキャラクターでもいいし、テキストを追っていくアドベンチャーゲーム形式のものでも全然かまわない。
自分が当初から抱いてた「プレイヤーが迷うおもしろさ」とか「うまくいかないこと自体も楽しむ」という感じが再現されていたので、当初と違うところとかは特にないかな。


桝田氏が想像する「自分の葬式」とは……?

――先ほど話題に出た「自分の葬式を見てみたい」ということについては、多くの人が一度は想像したことがあるように思いますが、桝田さんはいかがですか?

桝田:
自分の葬儀を想像するというよりも、これまでに自分の親や祖父母の葬儀を見るにつけ、その場で初めて自分の知らない親父像を知ったりして衝撃を受けたことがあったんだよね。「こんな人と友達だったんだ」とか、「高校時代はこんなことやってたんだよ」とか言われると「へえー!!」ってなって。

河上:
世のお父さんって子どもの前ではけっこう頑張って「お父さん」してるから、お葬式という特別な場が「ウチのお父さんてこんなところあったんだー」と意外な一面を知る機会になったりするよね。
桝田さん、あえて自分の葬式を想像したらどんな感じ?

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桝田:
いやー、ごくごく普通じゃないの?ま、死ぬ時期にもよると思うんだけど。
例えば今死んだら……、ある意味現役で死ぬからそれなりに人は来ると思うけど、それが20年後とかになると「そういう人もいたね」くらいになるんじゃない?

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河上:
そんなことないよー。私の中では、桝田省治の存在はお砂糖と並ぶくらい重要ですよ。生きていく上で、なくてはならない感じ。

桝田:
それ、砂糖じゃなくて塩でしょ?(笑)

河上:
桝田さんの存在って、日本を構成する1%くらいにはなってると思うけど。

桝田:
なってない、なってない(笑)。


――ケータイのユーザーはどちらかというとコアなゲーマーというよりもライトな印象がありますが、そういったことも含めてケータイ向けゲームとして特に意識したところはありますか?

桝田:
スタートからエンディングまで所要時間が5〜7時間で、1日1時間ほどプレイして1週間でひとつのシナリオが終わる。これを複数回プレイするという通勤通学時間に合うサイズに設計したりと、ケータイ向けにゲームのボリュームには気を遣いましたね。
一番こだわったのは、ゲーム内の残り時間と減退していくパラメータのバランス調整なんだけど、難易度は易しすぎる感じではないと思う。

――「勇者死す。」を実際にプレイしてみて「人生経験のある年代のほうがより楽しめそう」と感じたんですが、ターゲットとする年齢層などは設定してたんでしょうか?

河上:
一応、私としては30〜48歳くらいかな。50歳はちょっと違うかなと。

桝田:
……理由ないだろ。絶っっっ対ないよ、そんな48歳と50歳の差なんて。50歳までターゲットにしてたら、もっと売れてたかもしんないじゃん!!(笑)

河上:
(笑)

ゲーム画面

限られた時間を有効に使うには、効率の良いマップ移動がカギ。


2人がオススメする「勇者死す。」の楽しみ方

――では、5月25日から配信が開始された「ディレクターズカット」についてお聞きしたいと思います。今回、ディレクターズカット版を制作することになった経緯やきっかけを教えてください。

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河上:
きっかけは、配信する手段を増やしてもっと多くのユーザーに遊んでもらいたいということでしたね。

桝田:
その際、テキストデータや数値に関しては変更してもかまわない、ということだったので、せっかくだから通常版の配信後に気づいた点を微調整したものが今回のディレクターズカット版!!(笑)

――調整されたゲームバランスについてですが、具体的にはどういった点を変更したんですか?


桝田:
通常版では、性急なプレイスタイルを選択する人が多かったみたいで。その進め方だと僕の想定よりも急激に主人公のパラメータが低下して、結果としてタイムリミットの5日間のうち最後の一日を棒に振ったというケースが多発しちゃったので、パラメータの減退をやや緩やかに変えたんだよね。
この変更によって最後の1日の最後の1時間まで、あきらめなければ悪あがきができるようになったと思う。

――性急なプレイスタイルを求める人が多かったとのことですが、効率の良い進め方やコツはありますか?

桝田:
……年取ればわかるよ。

一同:
(笑)

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――確かにいろいろな問題を解決したり、みんなの希望を叶えてあげたいけどすべてが思い通りにはならないというのは、実生活とすごく共通点が多くて、そういうもどかしさが、ちょっと大人になったほうがよりリアルに感じられて楽しめるかなと思いました。

ゲーム画面

旅の途中で出会う女性6人の中に、果たして最愛の恋人はいるのか!?

桝田:
「このゲームを何と捉えるか?」だよね。形式が似てるからって一般的なRPGと同じだと思っちゃうと、どんどんパラメータが落ちていくからそんな進め方でうまくいくわけがないし。

河上:
勇者死す。」ってその人のプレイスタイルが最後の葬式に全部出るから、自分のいやらしさが出て落ち込んだりもするよね(苦笑)。短時間でそれが出るってまさに人生の縮図だよ。

桝田:
僕、30歳で結婚したんだけど、その時は自信満々で奥さんのことを「幸せにしてあげよう。俺ならできる!」って思ってたの(笑)。ところが今なんてさ、「人間一人を幸せにするなんて、けっこう難しいぞー!!」と。今は子どももいるから、労力を分けなきゃいけないし。

河上:
1回目のプレイはとにかく攻略うんぬん抜きで、全体の雰囲気を知るくらいの感覚で遊んでもらえればいいかなぁ。最初は「ああ、こうすればいいのか」でエンディングを迎えて、そこでようやく要領がわかるから「よし、もう一回!」と再チャレンジしてもらいたいですね。


桝田
「お好きに」だよねぇ。とりあえず最初は気に入った女の子だけを幸せにするようにしてもらえればいいんじゃないの?(笑)

――では、最後にユーザーさんへのメッセージをお願いします。

桝田:

RPGを遊んだことがある人は多いと思うんですが、そのおもしろさとはまったく違ったものが味わえるんじゃないかと思います。特に「ディレクターズカット」は通常版よりも無理が利いて、より自由度が増しているので、ぜひ自分なりの攻略方法を見つけてください。


河上:
自分がどうやって生きているか知りたい人に遊んでみてほしい。自分の生き様出ますから!

――ありがとうございました。

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